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深川通り魔殺人事件 - 傑作ワイド劇場・CM入り完全版(1986年)
https://www.youtube.com/watch?v=Ozc7C...
公開:2014年5月30日 10時28分
削除:2014年10月21日 放送コンテンツ適正流通推進連絡会から著作権侵害の申し立てがあったため
再生回数:70,045回、高評価数:162、低評価数:16、コメント数:30
テレビドラマ「深川通り魔殺人事件」について思うこと
【 犯罪を肯定、尊重、賛美する意図はないことを最初に記しておく 】
1986年の某日、朝刊のテレビ欄を眺めると本作のタイトルが目に入った。
タイマー録画をセットした理由は「あの事件のドラマ化か。どんな内容だろう」という、単に興味本位であった。
初見の後に抱いた「これは消さずにおこう」という思いは、デジタル化して7年を経た今も消えることがない。よって、テレビ放送を録画したVHSビデオテープは現在も手元にある。
本作は日本のテレビドラマ史上における、正に傑作である。
初見以来、何度観ても本作の放つ魅力は褪せることがない。
脚本、音楽、演出、配役、演技、撮影、編集のどれもが最高のレベルで結実している。
これほどの優れた作品がテレビドラマという制約がある中でもできることを、映像制作に携わる者は知るべきである。特に現在の日本のメディアにおいて。
実在の人物である川俣軍司と創作上の人物である川村軍平には、当然のことながら相違点が多々あり同一視してはいけない。
通り魔殺人事件が起きた背景にこそ思いをよせることが、原作を踏まえたテレビドラマという映像手段で、世に対する問題提起のアプローチを試みた製作陣の視聴者に向けた願いであろう。
本作は実際に起きた通り魔殺人事件を題材にしたノンフィクションのドラマ化で、登場する人名や言動は創作である。しかしながら、冒頭に犯人逮捕時のニュース映像を挿入し、被害に遭われた方々は実名と状態が映る。
何よりも主演の大地康雄が、「強烈」という言葉が薄く思えるほどの印象を残す。それは視聴者の心に焼きついて、相当の年数を経過しても消えないものだ。
「名演技」、「入魂の演技」、「渾身の演技」、「迫真の演技」、「鬼気迫る演技」、「憑依したかのような演技」、あるいは「神演技」。
が、どんな言葉を以ってしても本作における大地康雄を演技者として評する表現はない。
なぜなら、本作の大地康雄は川村軍平を演じてはおらず、川村軍平その人だからである。
よって、視聴者は川村軍平(川俣軍司ではなく)のドキュメンタリー的映像を受けとめることになると言ってよいだろう。
以下、ドラマの進行時間に沿って感想を列記する。
・15歳から18歳までの川村軍平を演じる子役は、スラリとした長身で顔立ちも後の大地康雄というよりも永島敏行という風貌である。世間を震撼させた通り魔の子供時代を演じさせるに辺り、逆にあえて風貌の似ていない子役を配役し、その将来に配慮したのではなかろうか。
・休日にトルコ風呂で遊んでから寿司店を辞めていくという男の場面。
この俳優のセリフ回しと演技は秀逸である。
軍平を「変わってるよ」と評する反面、「鼻血ブーだぞ」と、気に掛ける様子を見せる。気さくに語りかけ、下卑た笑い声を漏らし、ポンと軍平の胸を叩いて退室していく。
この時に「世界の国からこんにちは」の鼻歌で「あ、ヨイショ」と自ら合いの手を入れるのだが、演出かアドリブかどちらであろうか。
ともかく、ここに合いの手を入れるセンスには感嘆せざるを得ない。
演じた役柄である寿司職人見習いの男の愛すべき人柄を見事に表現した、一代の名演であろう。
・新宿歌舞伎町、走行中の電車内、停車駅でのロケーション撮影は撮影許可を得てのものであろうか。新宿プラザ劇場の看板は上映中の「HARMAGEDON 幻魔大戦」である。
電車内で軍平に声を掛ける中学時代の同級生オオムラ。
連れの女に目をやりながら「早稲田の法学部」の学生であることを自慢するのだが、これには苦笑。ガムを噛みながら挑むように軍平を一瞥するこの女も、オオムラ同様のブランド志向という人物設定であろう。
本作はこのように僅かな時間だけ軍平と絡む登場人物までも、視聴者に対してその人物像をアピールして印象付ける。全く素晴らしい。
・軍平が兄貴と慕う、小林稔侍演ずる寿司職人との別れの場面。
パチンコ屋の店内にカメラを据え、外に立つ両者を映している。寿司職人が立ち去ると同時に自動ドアも閉まる。関係が断ち切れるというイメージの心憎い演出である。
しかも、ドアが閉まる直前のスローダウンで、呆然と見送る軍平の横顔が最後まで映る立ち位置の妙。素晴らしいとしか言いようのない場面である。
・19歳で故郷に戻った軍平。一升瓶からコップに注いだ酒を飲むが、ツマミはバナナである。
スルメでも柿ピーでも煎餅でもポテチでもない。バナナである。バナナで日本酒を飲むのが軍平流なのである。視聴者が「なぜバナナ?」という疑問を抱くことは無意味であろう。
「そこにバナナがあったから」に他ならない。納得するしかない演出である。
そして、母親との会話。
「今、どこにいる?」「こごにいっぺよ」「どこに勤めてるがってことだぁ」
このやり取りは脚本家自身による母親との実体験からであろうか。決してバカにするわけではない、母親が本気で怒らないと知っていてのからかい、はぐらかし。
父親を畏怖し嫌う軍平は、母親に対しては上位で接する。
弟に土産と言って手渡したラジオからは水前寺清子の「いっぽんどっこの唄」が流れる。
『どんとやれ 男なら人のやれないことをやれ 』
風呂に浸かりながら両肩の入れ墨に目をやる軍平、そして沈む夕日のショット。
人生の応援歌がなぜか暗い先行きを暗示するように聴こえるのは、視聴者がドラマの結末を知っているからである。これもまた秀逸な選曲、演出である。
・寿司職人見習いの男と同様に、軍平と旧知の「マツバラのシゲヒコ」を演じた俳優も素晴らしい。特に外車を自慢したあとの笑い声は絶品。「軍ちゃん、土地がエエ値で売れてよぉ」と話す笑みは、まごうことなき見事な成金の道楽息子である。
そして、ヘア・スタイルから履いている靴やサングラスまで、正に頭の先からつま先までの完璧なコーディネートを手掛けたメイクおよび衣装担当スタッフは表彰に値する。
・軍平の実家である萱葺き屋根の半分朽ちかけたような古びた一軒家は水道の蛇口が屋外にあって、土間のかまどを燃すのは藁束だ。
昭和の中期以降でも地方の片田舎では珍しくなかった生活風景が写る。
軍平の常軌を逸した言動に触れ、只ならぬ様子に気付きながらも呆然と言葉を失うだけの母親。この母親役を演じた清洲すみ子の好演も記しておくべきであろう。
・再び上京した軍平が警官に追われた末に逮捕される場面。
ズボンの裾から足首に液体が流れ落ちるが、これにも苦笑。小便を漏らすなら股間から滲み出てズボンを汚すのが正しい。
なお、本作のドリー撮影は工事現場での逃走場面のみであり、そのためか印象に残るものとなっている。
川越少年刑務所を出所するまでのおよそ1分半ほど、BGMには陰鬱なメロディーの男性合唱が流れる。視聴者は本作の随所で、この暗く重苦しい沈んだ男性合唱を耳にする。
本作のイメージを形成するに相応しいBGMであり、全く素晴らしいの一言に尽きる。
・江守徹のナレーションに「異常体験」、「偏執型」、「被害意識」、「幻覚妄想」、「全人格を支配」という言葉が入る。
原作にも、犯行後の精神鑑定結果の中に「特異な異常性格に基づく精神病質」とある。
原作を読んだ感想としては、精神疾患者を司法に関わる人間たちが取り囲み、法の枠にはめ込んで審理し、鑑定して裁くという型通りの流れに、いささかの呆れと恐ろしさを思った。
特に、被告人質問でのかみ合わないやり取りには無意味さすら感じた。
ともあれ、「幻聴」が聴こえ始めた軍平。水戸少年刑務所の房内で怯え騒ぐ場面。
見入ってしまう47秒間である。
・出所した軍平を出迎える両親。父親の姿を認めた軍平は訝しげな視線を向ける。しかし、父親は息子を案じる眼差しで見る。
寄り添い歩きながら故郷に戻るよう諭す母親に無言の軍平。先を歩く父親の歩みが止まった瞬間、軍平の足元に怯えが走る。
「まだ臭いメシが食い足りねえのか」と父親。
うつろな表情の軍平。「返事しろ!」と怒鳴られるが、しばし無言。
そして、諦めたかのような、あるいは屈服したかのような表情で蜆掻きをやると答える軍平。
決して父親とは目を合わせない。
本作は川村軍平が中学校を卒業して集団就職で上京する場面から始まる。
よって、それ以前の家庭環境やエピソード等は描かれておらず、回想場面もないため、軍平と両親との親子関係は視聴者の推測に委ねられる。
愛情表現乏しく、厳しく接する父親に対し、軍平に甘えさせ庇護する母親。
個人的には、犯罪を引き起こす要因として「育った環境」は最も大きな割合を占めると考えている。
実際に事件を起こした川俣軍司は、原作によれば兄と姉2人と弟がいるが、彼が昭和42年3月の中卒時に13歳上の兄は殺人事件で服役中であった。なお、当時の進学率は90%を超えており、軍司の父親は高校進学を勧めたが、本人が就職する道を選んだという。
・被害妄想が高じてきた軍平だが、親元から独立して賃貸アパートで生活するようになる。
疎外感を埋めるべく、関心を引こうと稼いだ収入をスナックのホステスに貢ぎ、ヤクザに目をつけられ、覚せい剤にも手を出す。
「暴力団の親分から電波を飛ばされて困ってンだ」
そして、気に入ったホステスに旦那がいるとは知らずにいれこむ軍平。
成田闘争を報じるテレビのニュースとエロい妄想に耽る軍平の対比に、世の男性諸氏は我が身を見る思いで苦笑するはずである。
エロ本の表紙のヌード画の乳首の周囲を指でグルグルとなぞり、最後に乳首をグッと押し込むサディズム描写。
その指を舐めて味わうというこの場面は誰のアイディアだろうか。
「こんなことするか!?」とは誰しもが決して言えないのが個人の性的嗜好であろうが、それでもこの場面にはドキリとさせられる。
・覚せい剤を打つ軍平。
内気で社交性が薄く、人付き合いが苦手で気の弱い男の鬱屈が鬱憤となり、「怒り」として蓄積されていく。しかも、強さに憧れるこの男の精神は病んでおり、その上、覚せい剤の常用者なのだ。
「ほざくな…。オレはつえぇんだ、武士だぞ…。みでろ」
怒りを抱えた病んだ男が鏡の中の自分に語りかける場面。
映画「タクシードライバー」でロバート・デ・ニーロが演じた主人公トラヴィス・ビックルが思い浮かぶ。しかし、トラヴィスの怒りの対象が世の中の悪徳と不正であるのに対し、軍平の怒りの対象は仲の良い親子である。
そして、後には彼の妄想に存在する者たちとなる。周囲はどうすることもできない。
彼自身にも。
この2分間の場面における軍平の言動の演出には、「すごい」という言葉しか当てはまらない。白いブリーフ姿になるのはいささか強引とも思えるが、その過剰さが打ち消されて視聴者が納得するのは、覚せい剤を常用している病める川村軍平(川俣軍司ではなく)が「怒り」をあらわにする姿を目の当たりにしているからだ。
特に、窓の外に買い置きの品々を投げ捨てる場面の「怒り」は、本作が視聴者に与える衝撃の中でも比重が大きいだろう。
そして、軍平の「怒り」は次第に増幅していく。
幻覚妄想の更新と共に。
・幻聴に対して、交番の前でも構わず騒ぐ軍平。現在のモスバーガー門前仲町店辺りでの撮影だろうか。本作でベットハウスの中を初めて見たという視聴者も多いと思われる。
仕事にあぶれ、所持金も底をつく中で「どこでも雇ってもらえないよ」「アンタは野垂れ死にさ…」という男女の声を聴く。
ここからは、翌日に軍平がまた交番の前を通るまで、素晴らしい演出とカメラアングルが続く。
特に、幻聴との会話の後に包丁を構えて「つまようじ!」と叫ぶ場面。
朝の身支度で口をポカンと開けながら鼻の下のヒゲを剃るのに剃刀を真っ直ぐ引き下ろし、独り言をつぶやく場面。
蛇口を開けたまま洗面器に溜めた水を両手ですくって顔の石鹸を勢いよく洗い流す場面は、それぞれ短いながらも印象に残る。
使った靴べらを放り投げてベットハウスから歩き出す軍平が薄笑いを浮かべているのは、給料の額をまけてやったという理由で求人への応募先に採用されるものと確信しているからだ。
以降、ラストまでは「初見の衝撃」という点で、やはり映画「タクシードライバー」と重なる印象がある。
ただし、トラヴィスは次期大統領候補への発砲を直前で断念し、売春組織の一味から少女アイリスを救う行動に赴くが、軍平は…。
・不採用の返事を聞いた軍平の血走った眼。
包丁を携えた場面で、ドラマ撮影の監督から「カット!」の声が掛かっただろうが、その時に川村軍平は大地康雄に戻っただろうか?
ホステス襲撃の場面では本当に剃髪しているようなので台本通りの撮影ではないだろうが、それにしても日々、自身と役柄との切り替えはスムーズにできたのか、あるいは撮影終了まで大地康雄は川村軍平でいたのであろうか…。
出演俳優にこのような疑問を抱く映像作品は、本作のみである。
・あの陰鬱なメロディーの男性合唱が流れ、軍平のナレーションが重なる。
そして、画面に映るのは実際の事件に遭い倒れたベビーカーである。
BGM、ナレーションの内容、そして惨状。
この32秒間、視聴者が受ける衝撃は大きい。
倒れたベビーカーを映すという製作陣の意図を、視聴者はそれと意識せずとも突きつけられる。
「なぜこの事件が起きたのか」
・続く現場検証の場面。
軍平の言動に加えて、画面には実際の事件現場が挿入されるため、視聴者が受ける衝撃の度合いは更に高まる。
ただし、軍平を囲む警察関係者一同は、セリフのある担当刑事役を除き表情に全く緊張感がなく、一様に素人らしさを受ける。
周囲の俳優も真に迫っていると、リアル過ぎて余りに影響が大きいという判断もあったのだろうか。少しでもこれを緩和させるための配役という気がする。その効果は薄いが。
・「病める人間」と認定され、軍平は無期懲役刑に服する。
本作も終わる。
しかし、現実の通り魔事件は依然として起きている。
次はいつ、どこで、誰が被害に遭うか。
誰がうつ病になってもおかしくないと言われる現代社会。
精神疾患は比較的ありふれた病気とも。
また、有名芸能人が覚せい剤等の違法薬物を使用して逮捕される例が後を絶たず、一般市民における危険ドラッグの服用に伴う事件、事故も頻発している。
身近な存在の異変に気付いた時、どうするか。
自分が通り魔にならなくとも、通り魔の被害に遭うかも知れない。
自分が、あるいは家族が。
友人や知人、同僚が。
その時がこないことを願うしかないのだろうか。
2014年10月11日(了)
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